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2005年9月22日 (木)

『好色一代女』

『好色一代女』

原作・井原西鶴

脚本・斎藤雅文

演出・山田和也

出演・佐久間良子・市川亀治郎・山崎銀之丞

    宮本裕子・谷啓・近藤正臣・他

劇場・ル テアトル 銀座

《粗筋》都の片ほとり竹林の奥の庵に、妙に美しいなぞのような尼花子(佐久間良子)が住む。猫のように不思議な美少女弥勒(宮本裕子)にかしづかれ、彼女は訪れる人に自分の数奇な人生の、とりわけ男出入りのあれこれを面白く物語るという。

折りしも訪れた若い男2人。忍(市川亀治郎)と十郎(山崎銀之丞)は、自分の出生の秘密や親の死に花子がかつて関わっていたと疑念を抱き、これを確かめようと訪れたが、花子が語り始めたその人生の可笑しくも奇妙な噺の数々に次第に引き入れられてしまう。

今も花子に仕えている下僕のような男善九郎(近藤正臣)は花子の今までの人生の折節に必ず現れるからくり人形師である。花子が男に失敗したりするたびに善九郎は次の人生を用意する。花子は一体悪女だったのか、男に情のある、結局自分が損をしてきた女だったのか・・・。

若いの年寄りとりまぜて

男殺しの女ざかり

ジャズのリズムでアップテンポ

次から次へといそがしく

ほんとうなのか出まかせか

おかしなおかしな色ばなし

あら心は濁っていませんよ

《感想》とてもにぎやかな舞台だ。「井原西鶴・佐久間良子・ル テアトル銀座」このラインナップで誰がこの舞台を想像するだろう。山田和也氏、もしかして冒険好き?京都弁ではんなりと古典芝居のはじまりと思いきや、レビューのような歌と踊りが突如始まる。なに!これ!少々身構えて息を詰めて観ていた私は、このレビューシーンで「この芝居は気楽に楽しんでいいのね!」とまるっきり観かたを変えた。それからはまるで小劇場の乗り。やるじゃん、佐久間良子。決めるところは決め、ボケるところはボケる。なかなか柔軟な大女優だ。そして驚いたのは近藤正臣。立ち姿は若々しく、軽く、色気漂い、実に華があるのだ。佐久間良子も近藤正臣もめっきりテレビでは観なくなったが、これだけ舞台で映える役者なら当然のことだろう。テレビよりも舞台。王道だ。この2人を支える若手も個性が活きて印象に残る。市川亀治郎はさすが歌舞伎役者。所作の美しさに説得力がある。彼の動きが加わるだけで、時代背景がリアルに感じられる。多少台詞の聞き取れない部分もあるが、存在感がカバーしているので問題ない。山崎銀之丞は金八先生でもお馴染みだが、やはり舞台の人だ。声、活舌、動き、どれもキレがあり気持ちのいい芝居だ。もっと観たい、そう思わせる役者である。宮本裕子は「弥勒」を存分に楽しんでいるようで魅力的だった。歌も踊りも華やかにこなし、赤い襦袢で飛び回る様はまさに「弥勒」そのものだった。ラストの通路をハケて行くシーンは、竹林を飛び立つ小鳥のように可憐で、こちらまで花子同様見送る気持ちに胸がつまった。ふと、宮本裕子の「オフィーリア」など観てみたいと余韻の中で思った。

私は隅から隅まで存分に楽しんだのだが、どうも周りの観客はついていけてない印象を受けた。佐久間良子のお客様あたりだと思う。いつもと違う乗りの芝居に戸惑っていて、なかなか物語に入りこめない感じだった。芝居というものは、観客の反応でいかようにも変化する。もう少しこの芝居の観客が最初からこのテンポについて行けていたら、もっと盛り上がったのではないだろうか。客層を考えるともう少し助走の部分が必要だった気がする。

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コメント

ゆきみさん。舞台評論家になれる。すごい観察力、文章もうまくて語彙もある。このお芝居とっても観たいと思ったよ。

投稿: オリーブ | 2005年9月26日 (月) 05時09分

芝居は未知の分野なのですが、最近とても興味ありです!
オペラで生の声や歌や演技で感激して以来、興味の幅がぐんと広がった感じなんです。
ゆきみさんの感想を読んで、さらに観たくなりました。
観客で芝居が変化するということ、なるほどなぁと思います。
芸術の秋だし、お芝居もチェックしようかしら~。

投稿: ミワ | 2005年9月26日 (月) 21時10分

ミワさん、お芝居是非!!
観たい役者で選ぶのもよし、知ってる話から入るのもよし、オペラが好きならミュージカルもよし、まずは軽~い気持ちで楽しんでくださいな。私は開演直前の暗転が好きっ!!わくわくどきどきがMAX♪ちなみに『好色一代女』は27日~29日、梅田芸術劇場で公演するようです。最近はこのように東京・関西公演がセットのパターンが多いです。

投稿: ゆきみ | 2005年9月26日 (月) 22時30分

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