« 最近の私 | トップページ | この夏読んだ本たち »

2006年8月20日 (日)

薪能@氷川の杜

氷川の杜に足を踏み入れると

どしゃぶりの蝉時雨。

蝉の声が増せば増すほど静寂は深まる。

日が暮れきれぬ夏の夕刻は

神社の大鳥居に陽がまだ照りつける。

振り返ると空には入道雲。

真夏。

真夏に浴衣。

真夏に浴衣に38女。

風流だねぇ。

誰も言ってくれなかったので自分で言っとく。

粋だわねぇ。

でも涼しい顔して浴衣の下は汗が濁流の如し。

自分の汗で溺れるかと思った。

しかし、浴衣を着るのは楽しい。

汗の量とはうらはらに気持ちはシャキッと引き締まる。

というわけで、今回は中学時代のお友達3人で、

「浴衣で薪能」なのである。

氷川神社の宮司による神事のあとは

金春流 素謡 『翁』。

金春流 舞囃子 『松風』。

そして、和泉流 狂言 『昆布売』。

この演目のシテは野村萬斎。

萬斎演じる大名が、出かけの供がいないので、通りかかった「昆布売」を強引に供に仕立てて連れ立ちます。しかし、横柄な大名の態度に腹を立てた「昆布売」は、持たされていた刀を取り上げて立場の逆転を図ります。「昆布売」は大名に大きな声で昆布を売れと刀を振りかざし迫るのです。そして次々に謳うように売れ、踊りながら売れと要求を高めるのですが、この大名起用にそれをこなすのです。「昆布売」の目論見通り、道中大名が昆布売と化すのでした。

と、いう筋書きなのですが、狂言って面白い!!

現代でいうところのコントな感じ。

それもベタな。

「昆布売」の場合、大名が芸達者なら芸達者なほど面白いのね。

でも、「昆布売」役の破石 晋照さんという役者さん。

とっても良かった。

声の張り艶があるし、大名に対して商人という感じもよく出ていて

若そうなのに達者だなぁと。

上から目線で何者ですか?私。

休憩をはさみ、後半は

観世流 能 『巴』。

この筋書きは

木曽の旅僧が里の女に「ここは木曽義仲ゆかりの神社ですよ。同郷のよしみで回向してくださいな」と頼まれ読経していると、義仲の思い人であった巴御前の姿が・・・。もうこの世の人ではない巴であるが、現れた巴は義仲への想いを切々と語るのであった

という感じ。

もう、後半が始まる頃にはとっぷり日も暮れ

いよいよ「薪能」の趣。

Dscn0359

あんなに大騒ぎだった蝉たちも

今日は店仕舞いとばかりに夜の帳をおろし

静寂の主は風音へとバトンタッチ。

一陣の風とともに静寂を破る凛とした鼓。

客人の心を舞台へと誘う妖しげな笛。

薪にぼうっと揺らめく舞台。

現代感覚を麻痺させ

今ではないどこかへ私を連れ出すこの空間。

それが薪能の醍醐味。

巴御前の「果てしない静」の中の「一瞬の動」に魅せられ

思いがけず前のめりに。

いやぁ、巴はいつ動くのかなー動かないなー

ってじーっと観てたらさ

かっっっって一瞬、ちょっとだけ動いたのさ。

それがとっても印象的だったんだよね。

様式美だよね。

でね、よく「能面みたいな顔」って無表情の人のことを言うでしょ。

それって違うよなぁって思った。

能面をよく観てるととても表情が豊かに変化するんだよね。

ちょっとうつむくと物憂げに見えるし

もっとうつむくと悲しげに見えるし

まるでまぶたがあるかのように目が変わって見える。

正面を見据えると強い意志を感じるし

顔を振ると拒否に見える。

うっすら開いた口は

まるでしゃべっているようにも見えるし

そこから息遣いを感じたりもする。

それはもちろん、演者の力量でいかようにも能面が変化するのだろうけど

けっして能面は無表情ではない。のだね。

で、この素晴らしい巴を演じた観世 善正さん。

プロフィール見てびっくり!

2つ年下じゃないですかぁぁぁぁ!!!

伝統芸能の世界も、もう年下が活躍するお年頃なわけですね。

浴衣で浮かれてるばやいじゃないわけですよ。

でも、中学時代の友と会うとちょっとしたタイムスリップ。

机の引き出しいらず。

ドラえもんがいなくったって、あの頃に戻れるんだい!

というわけで、薪能のあとは尽きないおしゃべり。

浴衣姿の私たちは

ギターとアコーディオンと三味線があったら

間違いなく「かしまし娘」だったわね。

まだまだ「はんなり・しっとり」に及ばず。

でも、また来年も行こうね♪

氷川の杜の宮司様。

来年は萬斎じゃなくても行きますから!!!

Dscn0356_1

|

« 最近の私 | トップページ | この夏読んだ本たち »

コメント

真夏の夜の夢・・・幻想的で美しい夜だったのね。ゆきみちゃんの美しい文章で、私の脳裏にも一夜の様子がちゃんと浮かび上がりましたv

狂言は高校時代に観劇会かなんかで見たような・・・定番の『ぶす』だったと記憶していますが。大学では文学概論で能・狂言についても講義があったけど、これまたさらりとなぞって済ませてしまった気が;(だって専攻の時代じゃなかったからー^^;)
古典芸能も、今オトナになってから観るときっともっと感動するんだろうなー・・って思うんだけど☆高校生の私、勿体無い!眠がってないでもっと味わっとけ!!(笑)

浴衣も薪の焔も汗ばむ暑さも引き出しいらずの友達も、全ては現実にある美しいもの。ステキな夏の夜になって良かったね^^
最後に、私も萬斎ラヴv しゃんと伸びた背筋と切れ長な瞳がとってもステキ(∂ω<)☆

投稿: きゆ | 2006年8月21日 (月) 07時47分

きゆちゃん、こんばんは♪
萬斎ラヴ♪やっぱり?
いいよねぇ。そうそうあの切れ長の瞳。カッコよかったよ~。
まさに全てが真夏の夜の夢。
本当に楽しい夏の宵でした。

今は甥っ子の影響で「にほんごであそぼ」にもはまってるよ。あと、「からだであそぼ」の染五郎もね!
この年齢になってようやくわかる古典芸能のよさ。だよね~。

投稿: ゆきみ | 2006年8月21日 (月) 23時59分

ゆきみさん、もううっとりですよ。行ってもいないのに、すっかりご相伴に与かり堪能させていただきました。どうやってお礼をすればいいのでしょう。ゆきみさんの文章って本当にステキ♪どんなに薪能が良くても、どんな萬斎がステキでも、それを表す言葉を知らなければ、それはあまりに空しい。言葉の持つ強さ、美しさを十二分に知り尽くしたステキなゆきみさんのブログ。そのブログの読者になれた自分は最高に幸せものです。ありがとう、ゆきみさん。

「ややこしやあ、ややこしやあ、そなたがこなたでこなたがそなたで、ややこしやあ」って家でも一時、娘に萬斎ブームが起こりました。

投稿: renren | 2006年8月22日 (火) 14時23分

renrenさん、いつもありがとう!!
そして、こうやってrenrenさんから嬉しいお言葉を貰えて、私の明日の活力が今満タンになりました♪
なんとか雰囲気が伝わったかな?よかったぁ。
いや、しかし今私をこんなに褒めてくださるのはrenrenさんだけですよぉぉぉ。
感涙。renrenさんに褒められたくて、私また頑張ります!!

「ややこしやあ」も見たことあります♪これはとくに忘れられなくなるフレーズですよね。どうやらあの番組は再放送の連続のようですね。でも何回見ても面白いので、よく出来てるな~と感心。最近では録画しています(笑)

投稿: ゆきみ | 2006年8月22日 (火) 21時54分

ゆきみさん、おはようございます♪
浴衣で薪能なんてとっても素敵ですね。
私もrenrenさんと同じく
ゆきみさんと堪能させていただいた気分です。
一度能や狂言を生で味わってみたいなあ。

そして野村萬斎さん!私大好きなんですよ^^
NHKの朝の連続小説「あぐり」の頃からのファンなんです。
切れ長の目ももちろんだけど、あの独特の声が大好きです(爆)

ミワさんのところでの真心ブラザーズといい、
萬斎さんといい、ゆきみさんとは好みの共通点が多くてうれしいです^^

投稿: happy | 2006年8月25日 (金) 07時16分

happyさん、いらっしゃい♪
おお~またもや「好き」が一致しましたね!
けっこうすごくないかい?
真心ブラザーズも、彼らそのものというより「サマーヌード」が好きなんだよね。それも同じだったし。
萬斎さんは声です。声!
あの声がいいんですよ~。happyさん通ですねぇ。
狂言はもちろん本職ですから、完璧なのですが、以前テレビの舞台中継で「マクベス」を萬斎さんが演ってたんです。もうそれに釘付け!!蜷川演出とアテネでの公演ってことで、舞台装置や演出に負けがちなのですが、萬斎さんはちっとも見劣りしないんです。素晴らしい存在感!本当に素敵な役者さんですよね。

思いがけずに「好き」が同じって、こんなに嬉しいことなんですね!

投稿: ゆきみ | 2006年8月25日 (金) 17時49分

ゆきみちゃん、よしひさ@氷川です。

先日はようこそ『薪能@氷川の杜』においでくださいました。久しぶりに同級3人娘?!とお会いできて嬉しかったです。ゼヒ来年もお越しくださいね。観能券の手配は地元百貨店もいいけど、こちらに連絡してくれれば。。。

そうそう、以前も親御さんと散歩途中に寄ってくれたけれど、またいつでも遊びに来てね。
境内ゆっくり案内します。

投稿: よしひさ | 2006年8月25日 (金) 23時38分

これはこれは宮司様!
よくぞお越し頂きました。
感激の極みでございます♪
このような素晴らしい舞台を毎年ありがとうございます。
もちろん来年は、チケットの手配からちゃんと宮司様にご相談いたしますね♪

それにしても、あの薪の火興しは見ごたえがありました。あの緊迫感と期待はなかなか醍醐味があってよかったです。

かなりトウがたった3人でしたが、またおつきあいくださいませ~♪
よかったらまたここにも遊びに来てくださいね!

投稿: ゆきみ | 2006年8月26日 (土) 00時21分

今日はゆきみさんのこのログをじっくり読みたいがため、
仕事を速攻終わらせて帰って来たんです。
ああ、やっぱり最高。
薪能についての30行ほどの描写。
たまらないです。
能面の表情、様式美・・・。
それを夏の夜、浴衣で観られたゆきみさん。
いいなあー!!!

萬斎さん、わたしも好きです。
あの声、素敵ですよね。
実はわたしのおばも狂言を習っていて、
そのご縁で昔はよく観にいったりしていたんです。
その存在感はもちろん、印象に残るのは声でした。

大好きな音楽はちょっとおいておいて、
今は古典芸能。
年末年始にかけて、出掛けたいなあ。

投稿: ミワ | 2006年9月 5日 (火) 22時19分

★ミワさん
ミワさんったら、なんて嬉しいこと言ってくれるの~♪ミワさんの期待に答えられてるか心配ですぅ・・・。
おばさま、狂言を習ってらっしゃる!!
それは素晴らしい!狂言は独特の発声だからとても難しそう。でも、ちょっとやってみたかったりして♪

古典芸能、私もようやく堪能出来るようになりました。今までは教養が追いつかなくてね。それにしても、今は若手がどんどん出てきているんですね。意外に演者が若くてびっくりでした!
年末年始に古典芸能を楽しむのは理想だな~。そういうゆとりある生き方がしたいなぁ。私も♪

投稿: ゆきみ | 2006年9月 6日 (水) 20時35分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/105032/11532564

この記事へのトラックバック一覧です: 薪能@氷川の杜:

» 浴衣 [広島県医療機関]
浴衣を紹介しています。 [続きを読む]

受信: 2006年8月27日 (日) 14時54分

« 最近の私 | トップページ | この夏読んだ本たち »